映画と晩酌

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リリーのすべて【ドラマ映画】感想+ネタバレ有り

化粧を施した男性がこちらを見ているDVDジャケットを見て「あら、ジェンダーものかしら?」と興味を持ってレンタル。 この色っぽい男性がエディ・レッドメインだということは、鑑賞をはじめてすぐに男性姿のアイナーを見て気付きました。

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元々、顔の区別や記憶力に乏しい私ではありますが、ジャケットのレッドメインは本当に美しくて、魔法生物学者のニュート・スキャマンダーとは結びつかなかった。
英国王のスピーチ」や「レ・ミゼラブル」のトム・フーパー監督作品だと知ったのも鑑賞後。どちらも好きな作品です。特に「英国王のスピーチ」は色んな人にオススメしたい作品ですよー。

 

 

■ あらすじ

1926年デンマーク。風景画家のアイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメイン)は、同じく画家の妻ゲルダアリシア・ヴィキャンデル)に女性モデルの代役を依頼される。その際に、自身の内面にある女性の存在を感じ取る。それ以来リリーという女性として生活していく比率が増していくアイナーは、心と体の不一致に悩むことに。当初はそんな夫の様子に困惑するゲルダだったが、次第に理解を深め……。

 

■ アイナーとリリー

男性「アイナー」から女性「リリー」への変貌が見事でこの映画の一番の見所。そしてそのリリーの存在を表に引き出した発端は皮肉にもゲルダにあるのがこの映画のネックなのです。
表だった原因はゲルダがアイナーに女装を勧めたことがあげられます。元々、アイナーの中に女を感じ取っていたゲルダのちょっとしたいたずら心がリリーを覚醒させてしまったんですね。

また、隠れた原因としてゲルダがキャンバスに描くリリーの姿があまりにも美しかったことがあげられます。アイナーの中にあるリリーの理想像となったのです。

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そうしてゲルダはアイナーの女性化と共に心が離れていくのを目の当たりにすることになるのですが、それでいてアイナーの女性としての魅力をもっとも理解しているのもゲルダだったりするのです。これは切ない!

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控えめで温厚なアイナーと自由奔放で強がりなリリー。それは「自分に自信がないアイナー」と「自分に自信があるリリー」にも言い換えることができると思います。
自分に自信ができて今も未来もやりたいことでいっぱいのリリーは少女のようです。少女の衝動っていうのは血の繋がった親ですら止めることはできないもんですよねー。周りの人たちに心配をかける達人です。(私もいつも親に怒られている子供でした)

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全身鏡に映る自分の性器を股に挟んで隠したり、ゲルダやストリッパーの色っぽい所作を勉強するリリーの姿がこの映画の見所の一つでもあるのですが、そういったシーンが出るたびに「誰か彼を止めてー!」と思ってしまいました。
それほどまでにゲルダがアイナーを思う気持ちは素晴らしく、男前なゲルダと温厚なアイナーの組み合わせが私は好きだったのです。

 

■ 埋められない距離感

リリーの絵を描くときのゲルダの男前っぷり。困惑や不安を押し殺すように、それでいて目の前のリリーに心奪われるように筆を走らせる姿がかっこいい!惚れる!(女でもいいじゃないかリリー!!)

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そんなゲルダにも夫としてのアイナーに会いたくてたまらないときがある。揺れ動く自分が不安で堪らなくて。そりゃそうだよ、だから女は結婚するんだよ。
「お願い。アイナーに会いたいの。アイナーを連れてきて」
何度頼まれても首を縦には振らないリリー。ただ、アイナーなりに最善策を模索するきっかけとはなります。女性としてのアイナーは本当に強かなのです。

 

■ 誰かを愛することに性別は関係ない。

ゲルダを大切に思う気持ちに偽りのないアイナーは自分の性について調べたり医者にかかったりします。その努力が報われることはなく、精神分裂を疑われ拘束されそうになり逃げ出すアイナー。

そんな彼の姿を知って、ゲルダドレスデンの婦人科医ヴァルネクロス教授を紹介する決意をするのです。
ヴァルネクロス教授は二人に性転換手術を持ちかけます。その命がけの大手術は2回に分けて行うことになります。1回目は男性器の切除。2回目は膣の形成。
この手術は男性としてのアイナーの完全なる消失を意味します。

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ゲルダは拒絶と絶望を繰り返しながらもアイナーを求める気持ちは変わりません。「アイナーが死んだことを受け入れてほしい」とリリーに言われながらも、ゲルダは彼を支え続けます。この自己犠牲とも思える愛情の深さがあまりにも美しい。絶対に裏切られることのない安心感というものを目の当たりにしました。

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最終的には二人の間に性別の壁は関係なくなっているのです。「私はあなたの愛には値しないわ」と言うリリー。最高ですね。

 

また、二度目の手術前にゲルダが「あなたが苦しむ姿は見たくない」と伝えて病室を去るシーン。残されたリリーは涙するのですが、あれは夫としてのアイナーが妻のゲルダを思って流した涙ではないだろうか…と思ったのは私の都合の良い解釈でしょうか。

 

■ まとめ

一度目の手術を終えてアイナーが完全にリリーとなってからは終始泣かされっぱなしの1時間弱でした。

このままではゲルダがあまりにも不憫なので一瞬でもいいからアイナーの姿を取り戻してほしい、と願ってばかりいました。ゲルダがリリーを受け入れようと物語が進行していくのに背きたい気持ちがあった。この感情がある限り、私はジェンダーレスの方々を心から支援する存在にはなれないのかもしれませんね。

性、愛、友情について考えさせられる素晴らしい映画でした。

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とにかくアイナーを演じるエディ・レッドメインの演技が凄まじかった。今後、エディ・レッドメインが私たちにどんな映画を見せてくれるのか楽しみです!

また、映像も構図や美術が綺麗で楽しめました。シンメトリー!

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【補足】

ゲルダを演じるアリシア・ヴィキャンデルのビジュアルがどストライクな私ですが、調べてみると「エクス・マキナ」のエヴァなんですね!「エクス・マキナ」を見たときも、日本人受けが良さそうな魅力的な顔だな〜と思っていました。